大阪電気通信大学

擬人化を用いた、今昔の桜と日本人の関係を見るビジュアルの制作

今昔の桜と日本人

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古代の桜ヤマザクラと現代の桜ソメイヨシノの2種の桜を擬人化を用いて、桜の個性と、人々との関わり方の違いを比較しビジュアル化する

新型コロナウイルス流行に伴い、9月入学案が話題となりました。その際に、桜と共に新生活が始まる文化が失われてしまうのが寂しいという意見を見て、日本人がなぜ桜を大切に思うのか興味を持ちました。桜の歴史を調べる中で、昔と今の日本人が思う桜は別種であることが分かりました。例えば、新古今和歌集の桜の歌を見て、私はソメイヨシノを想像しました。しかし、平安時代にはソメイヨシノという桜は存在しません。昔と今では、同じ日本人でも桜の捉え方が違うということが面白いと思いました。国花である桜について少しでも興味を持ってもらえればと思い、桜の個性と人々との関わりを感じることができるシネマグラフ作品を制作するに至りました。

ソメイヨシノ

ソメイヨシノ

江戸時代後期に染井村の植木職人に作られたとされる”ソメイヨシノ”

現代日本では桜といえば、ソメイヨシノが思い浮かびます。圧倒的な数と花だけが大量に咲き誇る美しさで、その名を轟かせています。ソメイヨシノはクローンで、人の手によって増殖し続けています。

頭部の桜で全国的に広く分布していることや、クローンという特徴をあえて同じ桜の素材を使用することで表現しました。花言葉の「純潔」を白い衣装で表現しています。この衣装は和袖の洋服で、西洋文化が入ってくる時代背景を表しています。

ヤマザクラ

ヤマザクラ

江戸時代以前の桜代表である”ヤマザクラ”

農耕民族であった日本人にとって、田を植える時期を知らせる桜は神聖的なものでした。平安時代より花見という文化が貴族間で広まり、桜を歌う和歌もみられます。ヤマザクラ(シロヤマザクラ)は赤い葉とともに花を咲かせます。

花言葉に「高尚」という言葉があります。静かに佇み上品で気高いイメージを表現するため、黒髪長髪で白と赤の着物というビジュアルにしました。

右から左に時間が流れる絵巻の構成で、2種の桜を対比しています。

ソメイヨシノは人工的であることや、現代の花見、圧倒的な数などから人々との距離が近いと感じたため前面に配置しました。

逆に、ヤマザクラは自然的で神聖なるものという性質から山の上に静かに佇んでいます。中央の田とヤマザクラを同じ光で照らすことで、古来日本人との関わりを示唆しています。

全体的に見ると、絢爛なソメイヨシノと素朴ながらも神聖さを感じるヤマザクラという構図です。

最後までご覧いただきありがとうございました。

作者プロフィール

牧野美月

  • 総合情報学部 デジタルゲーム学科 空間表現研究室所属
  • 3DCGやアニメーション、グラフィックデザインを学び、自主制作ではフォトコラージュ作品を主に制作。

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